新型コロナウイルス感染症は私たちの生活や仕事にかつてない変化をもたらし、テレワークや在宅勤務が一般化した今、多くの企業がアフターコロナのオフィス改革に迫られています。
アフターコロナの働き方は、従来の職場からどのように変わるべきなのでしょうか?働き方改革「ABW」に再注目が集まる理由、オフィス戦略としてABWを導入した日本企業の実例も併せてご紹介します。
アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)とは
アクティビティベースドワーキングとは(Activity Based Working、略ABW)、作業内容に応じて適切な場所を選んで働く「時間と場所を自由に選べる」スタイルを意味します。
ABWはオランダのコンサルタント会社Veldhoen+Companyが1990年代に提唱したワークスタイルで、従来の固定された自分のデスクなど決まった場所で決まった時間のあいだ働くのではなく、タスクに応じて最適な環境で仕事をすることにより従業員の生産性が向上するという考えです。
オフィス改革で浸透した「フリーアドレス」と同じでは?と思う方もいるのではないでしょうか。
フリーアドレスとABWの違いは、社内の固定席をなくすことでスペースの有効化とコストの削減を主な目的としているフリーアドレスに対し、ABWは仕事内容に応じて生産性を高める環境(社内外問わず)を自分で選ぶことによって業務効率アップを目的としています。そのためABWはフリーアドレスの一歩先の働き方とされ、段階的に移行する企業もあります。
ABWの「A=アクティビティ」は、10種類の活動に定義されています。
ABWが定義する10種類の活動(仕事)
1. 高集中(個人作業)
2. コワーク(メンバーと場を共有しながらの個人作業)
3. 電話/WEB会議
4. 2人作業(横並びで作業)
5. 対話(2〜3人)
6. アイデア出し(3人以上の協働)
7. 情報整理(3人以上で計画の進捗や整理)
8. 知識共有(3人以上でプレゼンターが話す)
9. リチャージ(心身のリラックス)
10. 専門作業(特別な設備が必要)
例えば、1人で集中したい、声をかけられて中断したくない作業の時は「高集中」にあたり、個別ブースの利用が効果的です。また、チームメンバーと活発にアイデア出しをしながらすすめたい時にはホワイトボードのあるミーティングルームや気軽な雰囲気で会話できるラウンジなどが適します。
ABWを導入したオフィスが求められる理由とは?
刻々と変わるビジネスの世界で、スピード感あるイノベーション、生産性向上、働き方の「柔軟性」は以前より強く求められています。
特に日本では人材獲得は大きな課題となっており、働き方の多様性が求められるようになりました。さらに、ワークライフバランス、感染症や災害対策など企業が向き合う課題は多岐に渡り、働き方改革「ABW」に再注目が集まっています。
活動に合った環境を従業員が自ら選びながら働くABWのスタイルのメリット・デメリットを確認してみましょう。
ABWのメリット・デメリット
メリット
● 生産性向上
- 最適な環境で効率的に仕事ができる
- イノベーション活性化
- 自ら考えながら働く自主性が育つ
● 人手不足対策
- 「柔軟な働き方」アピールにより優秀な人材を獲得
- 育児や介護など都合による離職率が下げられる
● 心身の健康維持
- 選択肢が増え、従業員の満足度UP
- 休息・リラックスできる場所がある
- 部署の垣根を超えて自然な人の交流を促す
● コスト削減
- 固定席を排除
- ペーパーレス化が進む
- 急なメンバーの増減に対応できる
デメリット
- 帰属意識の低下
- 導入に時間と初期費用がかかる
上司から部下が見えるデスクで仕事をしていた従来の環境とは異なるため、定期的なコミュニケーションの場を設けないと意思疎通の難しさが心配される場合があります。
ABW導入にあたり必要なこと
企業はABWを導入しオフィス改革をする時に、既存の状態からの変化に対する従業員の戸惑いなど、ある程度の反発を想定して次の点を明確にし、社内説明会やワークショップにより周知していきます。
● 何のために導入するのか目的を伝える
● 運用ルールの策定に従業員が参加する
新しい働き方の運用方法を明確にし、業務をサポートするツールを事前に準備、従業員との共有が大切です。時間と手間はかかりますが、ABW導入による働き方改革の目的を伝えることが従業員に納得して働いてもらう鍵となります。
ABW導入した日本の企業事例
実際にABW導入に成功した日本の企業の例を見てみましょう。
資生堂
2020年度「日経ニューオフィス賞」を受賞した資生堂ジャパン本社オフィス。
ワークライフバランスを実現するために、在宅勤務制度の導入、テレワーク環境の整備、クラウドサービスの活用などを実施し、地方オフィスから段階的にリニューアルを進め、本社オフィスもABWを導入しました。
社員同士の交わりによりイノベーションを生み出すワークスペースを設けたり、ITツールの使い方を得意な若手社員が先輩社員へ指導する取り組みを行うなどが功を奏しています。
日本電気株式会社(NECグループ)
社員が自律して「時間と場所をどのようにすれば自身やチームのパフォーマンスが最大化できるのか?」を考えるよう、社員の意識や行動を変えていくことを目標にオフィスリニューアルを遂行。
ABW導入の意義と目的、ビジョンを共有するワークショップをおこない、従業員の働きやすさ使いやすさの意見を取り入れています。
グループ社員が誰でも利用できるコワーキングスペース、集中できる個人ブース、寛げるラウンジスペース、セミナーができるホール、図書スペースなどが設けられました。
ハウス食品
「適業適所」という考え方を軸としてABWを導入。環境を整えるためにペーパーレスに取り組み、私物を納められる個人ロッカーを設置したり、2年以上をかけて働き方改革や新しいオフィスデザインについて全部署からのメンバーが参加したワークショップを開催。
大成建設
本社ビルだけでなく技術センターや建築・土木作業所などでもABWを採用。従業員の健康に配慮する「健康経営」を実践し、従業員の心身の健康へ投資する考え方により、生産性向上や組織の活性化を目指しています。
企業がフレキシブルオフィスを活用するメリット
様々な分野の日本企業がABWを導入して社員が働きやすい環境を提供していることがわかりました。
素早く導入したい、費用を抑えてABWの導入をしたい、柔軟な運営をしたい企業にはフレキシブルオフィスの活用が効果的です。新しいオフィスを設ける準備期間と初期投資を省くことが可能です。
フレキシブルオフィスを利用するメリット
● オフィス賃料や最新設備、備品などコストの削減
● 短期間でもすぐ利用可能で複数拠点を持てる
● 人数増減に合わせてスペースの拡大縮小を柔軟にできる
● 在宅勤務での従業員の孤独感やストレス軽減
フレキシブルオフィスが注目される理由
アフターコロナのオフィス戦略では、特に働く人の安全性の確保と心身の健康が重視されます。在宅勤務で見えてきた仕事環境の不整備や自宅でひとりで働く孤独感など、喫緊の課題となっています。
全員が同じ時間に職場へ集まる従来の働き方からの転換が必須となっている今、ニューノーマルは、職場は1箇所に縛られない働き方、テレワークとオフィスの両方を活用するハイブリッド型が主流になると考えられています。
ハイブリッド型ワークの実現には、ABW型オフィスであるフレキシブルオフィスの利用が注目されています。フレキシブルオフィスのメリットを活かし、在宅やメインオフィスなどを組み合わせることにより、企業は状況の変化に対応して柔軟な運営が可能となります。
孤立したテレワークだけでなく、リアルな交流を戦略的に組み込むことで、コミュニケーションから新しいアイデアやインスピレーションが生まれることも期待されます。そして、従業員のウェルビーイングが上がり、モチベーション向上がもたらされます。
東京のフレキシブルオフィスについてもっと詳しく知りたい、ご検討中の方は、お気軽に私たちへご相談ください。