日々ビジネスを行うにあたり、交渉は避けて通れないものです。社内で契約条件や給与の交渉をする場合将来のビジネスパートナーやジョイントベンチャー(合弁事業)候補と交渉をする場合でも、スキルがあれば、交渉を円滑に進めやすくなります。
とはいえ、商談を成功させる方法を知っているだけでは、実際の交渉時に戸惑ってしまうこともあるでしょう。それぞれの交渉では違いがあるため、状況に応じて異なる交渉術が必要となります。この記事では、交渉術について、そして交渉を成功させるための7つのヒントをご紹介します。
交渉における4つの性格タイプと対処方法を理解する
ビジネスシーンで交渉をすると、さまざまな状況と多様な性格の人たちに遭遇します。戦術的交渉スキルを磨くのはもちろん大事ですが、適切な行動方針を考案するには交渉相手について理解を深めることが必須です。ビジネスにおける交渉者の「性格」は、主に以下の4つのタイプがあります。
楽観主義者 – ハーバード・ロースクールによると、楽観主義者の交渉相手は、交渉を両者に利益をもたらす機会 (win-win) と見なします。楽観主義者は価値を付加する戦略に集中するので、交渉中の事柄について多くの質問をし、双方にとって有益な機会を有効活用しようとします。
忍耐力のある者 – 商談において、忍耐力は非常に重要です。取引を始めたくてしょうがない交渉者もいますが、受け身で交渉に臨む人たちもいます。受け身の人たちはすぐに結論に急ぐのではなく、長い時間をかけて考え、再度交渉に臨んだり、対抗案を提示したりするのを好みます。
承諾者 – このタイプの交渉者は物事の大局を見る人たちなので、勝つためにひとつの戦で負けることも惜しみません。全体を通して利益があると考えられる場合は、あなたの要望を受け入れて、自分たちにとってはあまりよくない条件でも我慢することもあります。
ハーバード・ロースクールの教授で交渉プログラム代表のロバート・H・ムヌーキンは、著書『悪魔との取り引き 交渉すべきとき、戦うべきとき(未訳)』で、元南アフリカ大統領・公民権活動家のネルソン・マンデラを「20世紀最良の交渉者」と呼んでいます。マンデラ元大統領は自分にとって重要な価値観を守りながら譲歩を重ねたため、何十年もの交渉の結果、確実に交渉に成功したと、本著でムヌーキンは分析しています。
攻撃者 – 攻撃的かつ積極的に交渉に臨む人たちは、「承諾者」タイプと真逆の効果をもたらします。攻撃者タイプは謙虚に妥協するのではなく、簡単に獲得できる勝利を探し、堂々と自らの支配的立場を見せつけます。このようなやり方は短期的に効果的ですが、長い目で見ると交渉相手との関係性を壊してしまう場合もあります。
交渉時にあなたがどの性格タイプであっても、状況に応じて適切なアプローチを取ることが欠かせません。求めている結果や目標をもとに、交渉術を調整しましょう。交渉で成功するために、以下の7つのスキルを磨くことをオススメします。
交渉を成功させるための7つの戦略
商談の際、自分の事業にとってプラスになる形で効果的に商談をまとめるには、次の7つのコツあります。
1. 問題を特定する
好戦的に交渉に臨むと、自分の意思決定に悪影響を及ぼす可能性が高まるので、このような姿勢は理想的ではありません。交渉によって解決したい問題や、その問題の根端をまず特定する、その後、解決案を提示し、同意に持って行くのが現実的なやり方です。
2. 信頼を築く
たとえ対面で交渉をしていなくても、積極的に相手の発言に耳を傾け、相手の意見に興味を持ち、信頼関係の構築に取り組むことが重要です。交渉を成功させるには、偏見を持たず、親しみを持って相手に接する必要があります。このアプローチなら、仮に今回の取引で「負けた」としても、少なくとも相手に好印象を残すことになるので、長期的によいチャンスにつながる場合もあります。
3. 相手の話をよく聞き、ある程度アドリブで進められるようにする
同僚を相手にネゴシエーションスキルを練習する、または事前に頭の中でやりとりを想像するように勧める専門家は少なくありません。でも、これでは実際の交渉の場で、相手の話を注意深く聞くのを忘れてしまう場合もあるでしょう。次に自分が何を言うかに集中したり、台本通りに話そうとしたりせず、しっかり相手の話を聞き、必要に応じてメモを取ることが重要です。こうすれば、取引の成立の鍵となる大事な詳細を聞き逃すこともありません。
4. ボディーランゲージを使う
対面で交渉をする際は、ボディーランゲージと表情をコントロールするようにしましょう。ポーカーをプレーする時と同様に、不要に自分の手の内を明かすのは避けるべきです。非言語コミュニケーションは、相手に強い印象を残すものです。あなたの言葉と非言語コミュニケーションが一致しない場合、相手から不審に思われる場合もあるので気をつけましょう。
5. 自分の強みと弱みを理解する
上述のとおり、状況に応じて交渉スタイルを変えることは大切ですが、自分の強みと弱みを考慮することも忘れてはなりません。たとえば普段、積極的な姿勢でいると、周りから攻撃的だと見られたり、自信を持っていると横柄だと思われたりする人の場合、別の姿勢で交渉に臨む、または、このように誤解されないように努力することを検討してください。同僚に相談して、どんな時に交渉がうまくいったのか、過去の交渉体験を振り返ってみましょう。
6. 自分の力を信じる
交渉に臨む際には、自分の力を信じて、交渉の目的を忘れないことが、とても重要です。強い信念があれば、自分に有利な方向に交渉が進み、取引が成立する可能性が高まります。あなたが求めていること、あなたにとって大事なことについても、意思疎通しやすくなるでしょう。逆に、交渉結果や交渉自体に強い関心を持たない人が交渉をすると、なかなか円滑には進まないでしょう。強い信念を持って交渉に臨むのがベストです。
7. 潮時を見極める
最後に、交渉を終了すべきタイミングをきちんと理解することが重要です。どんな条件であっても、取引を成立させたほうがいい場合もあります。一方で、商談をまとめることなく、交渉を途中でやめたほうがいい場合もあります。ですので、ネゴシエーションを始める前にまず、自分が求めている取引はどのような条件なのか、明確にイメージしてみましょう。イメージ通りに取引が成立しそうもない場合は、交渉を終了するのが最善のケースもあります。何時間も準備に費やしたのに、商談をまとめずに引き揚げるのは気が引けるかもしれません。潮時を見極める能力はすぐには養えるものではありませんが、常に念頭に置くようにしましょう。
ネゴシエーションを成功させる
高い交渉スキルは、ビジネスにおいて非常に重宝されます。仕事の一環として交渉をしなければいけない人でも、ただ社内でもっと積極的に仕事に取り組みたいと思っている人でも、ネゴシエーション能力を養えればビジネスで成功しやすくなるでしょう。
とはいっても、他のスキルと同様に、ネゴシエーションスキルを培うには練習が必要で、時間もかかるでしょう。次回、交渉する際に、この記事で紹介した7つのコツをぜひ使ってみてください。交渉がどのように進んだかメモを取り、失敗や改善点から学びましょう。あなたならできるはずです!